東松照明氏の沖縄時代の写真に釘付けになった。真夏のサトウキビ畑で牛と老人が写っている写真。それまでこの写真家を知らなかったが雑誌かカレンダーになっていたものでもそうなってしまった。切り取り壁に貼って眺めている。後に偉大なる人物の作品と知り感動している。写真からサトウキビ畑の枯草の匂い、真夏の太陽から出る温度、空から、来る過酷な乾燥、そして静寂、が実感できたのである。写真がなくともいつでも沖縄の畑の真夏を感じることができてしまう。匂いを漂わせる風すらない。暑い。一瞬の写真であるのに永遠の記憶が刻まれてしまう。それは匂いの記憶に似ている。魂の写真家である。